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チームビルディング研修をいくつか受けて学んだこと

今回はチームビルディングについて書きます。といっても一般企業でチーム作りをした経験はないため、医療現場での経験(とくに救急医療)や心理学的(とくに社会心理学)などの知見などをもとに書きます。

働いていた病院が3次救急を担当していたので、かなり重症な患者さんが運ばれてくるんですね。生死の危険がある人が多いので、緊迫感がありそういった状況の中ではチームがまとまりやすく、それぞれが持っている最大のパフォーマンスを発揮しやすくなる印象があります。

火事場の馬鹿力という言葉があるように、緊迫感やいざという場面では人はもっている以上の力を発揮するし、お互いに助け合わなければ問題を乗り越えられないんですよね。

危機感の中で人はまとまると思います。逆にぬるま湯が続いてしまうと、人は本来なまけものだし力を抜いてしまう生き物なので(脳のエネルギーを無駄なことに使わないため?)、ある程度の緊張感はどのような現場にも必要だと思います。

チームビルディングとは?

メンバーがゴールに向かってそれぞれが主体性を発揮し、協力しあう集団(組織)になるための取り組みのことです。

個々の主体性協力(共通の)ゴールなどがキーワードでしょうか。

リーダーになれば、チームや組織をまとめる必要性がでてくるでしょうし、個々が主体性をもって動いてもらいたいと思うのは当然のことだと思います。

たくさんの本が出ていますし、チームビルディングや組織作りのための研修もたくさんありますので、これまでに読んだ本、受けた研修、行った研修などについても紹介します。

医者でありながら、チームビルディングを学ぶために相当の時間とお金を費やしてきたので、病院の先生にも企業の社長さん、リーダーの方にもお役に立てる内容になっているとうれしく思います。

チームとグループの違い

絶版になってしまいましたが、『高業績チームの知恵』という書籍にチームとグループの違いやえせチームについて書かれています。
ジョン.R. カッツエンバックとダグラス.K. スミスという二人の経営コンサルタントが、驚くほどの高い業績をあげている企業の商品開発チーム、バスケットチーム、救急医療チーム、ボランティアチームなどを調査し、高い業績を上げているチームの特徴をまとめた本です。

簡単にいうと、メンバーそれぞれの能力を1とした場合に、チーム全体で発揮される成果が
「1+1+1+1+1=5より上」になる集団のことをチームと言うそうです。

「1+1+1+1+1=5またはそれ以下」の場合は、グループとかえせチームと呼んでいます。共通のゴールがあるのに、それぞれの成果が1よりも下(0.5とか0.8とか)だったら、ゴールが共有されていない可能性があるし、組織として問題ありそうですね。

逆に、チームとしてまとまることで、それぞれの成果が1よりも高くなれば(1.5とか2.0とか)、リーダーとして「うまくいってるな!」と思うでしょうし、そんなチームを作りたいと思うでしょうね。

研修の依頼を受ける時、「どうしてこの研修を希望されるのですか?」と質問することがあります。よく言われるのが「個々の能力アップをして欲しい」という理由なですが、この場合はチーム作りではなく、個々の能力アップですね。

研修のゴールは、「「1+1+1+1+1=5」だったものを、「1.2+1.2+1.2+1.2+1.2=6」にしたい ということになります。

これはチームビルディングではなく、個々の人材育成でありグループ全体の能力の底上げが目的になります。

個人的な意見ですが、高業績をのぞむのなら、個々の能力・スキルアップ以上に、チームビルディングの取り組みもしないといけない気がします。

*こちらの記事もお読みください。研修では下記記事に書いてあるようなマインドセットが大切です。
[clink url=”http://sangyoui-work.net/mindset/”]

経営者、リーダーからすると耳が痛い話かもしれませんが、本来能力が高いのにその能力を(その職場では)発揮しない社員さんは現実にたくさんいるし、どんどん能力をのばしていき他社へ転職してしまう社員さんもいます。

「うちもそうかもしれない・・・」という危機感をもって、この続きをお読みいただくといいかもしれません(笑)

ひとつ、チームビルディング研修で有名どころを紹介します。

チームビルディング研修を実際に受けてみて感じたこと

株式会社アグサ野外教育部(旧足柄グリーンサービス)のチームビルディング研修

かなり前にここでチームビルディング研修とファシリテーター養成プログラム(何もない山の中で2泊3日の研修!)を受けたのですが、その時のことはよく覚えてますし、知らない人と一緒に取り組み、目標を達成した時の高揚感は今でも体に残っています。

どのようなチームビルディング研修プログラムなのか?

まず最初に座学でチーム作りの基本的なことを学び、あとは森の中に設置されたコースを移動しながら、目標設定、課題解決、振り返り、目標の再設定、課題解決、振り返り・・・・をしていきます。

これを繰り返すことで、チームに一体感が生まれていきそしてチームが本気になっていくのを感じました。

・協力しないと危険(なものもある)
・協力しないと課題解決できない
・ゴールを共有しないとそこに集中できない
・ファシリテーターがチームの能力を引き出すのがうまい

といった要因で、チームに一体感が生まれ本気になっていった気がします。

課題の一例をあげると、フープくぐりというものがあります。手をつないで円になり、あの腰周りを細くするためにも使われるフラフープを時間内に全員がくぐります。

(動画をのせていましたが削除しました。)
こちらの動画はある業界団体の経営者さん向けにチームビルディング研修をした時のものです

うまくいかなかった時、チームメンバーを非難する人もいれば、よかったところを探す人、リーダーシップを発揮して意見を言う人、全体を俯瞰的に眺めているだけの人など、いろいろなチームの関わり方が見られます。

どのようなチームへの関わり方が良い・悪いと評価するのではなく、それぞれの関わり方を客観的に眺め、良いチームにとって何が必要なのかを体験を通して学びます。

チームビルディング研修は、ワーク(集団で取り組む課題)は研修プログラムによって違っても、体験⇒学習(体験を振り返り、そこから学びを得る)という流れになっていると思います。

アグサ野外教育部の研修を受けて思ったのは、体を動かすワークは学びの効果が高いということです。

頭だけを使ったワークよりも、体も動かしたほうが脳が刺激されますし、必ず参加しないといけないし、ゲーム要素もあるので、主体的に取り組みやすいんですね。

参加に積極的でない人でも、体を動かしてしまえばだんだん楽しくなってきて、積極的になってきます。
楽しさは、主体性をもたせるにはぴったりですね。

この研修プログラムの特徴

アグサ野外教育部は、中学・高校などがクラス替えの4月などに受けることが多いですが(お互いを知り合い、一気に距離を縮められる!)大企業も受講しにきているみたいです。

「アグサ野外教育部の研修プログラムの他にはないセールスポイントをひとつあげてください」と言われたら、本気になって取り組めること、本気にさせる仕組みがあることだと感じました。

ファシリテーターの人たちは、若かったですよ。たぶん20代だったと思います。20代のファシリテーターが年上の研修参加者たちに、必要があれば厳しいことを言って、本気にさせていくんですね。

その姿を見て、相手のやる気や本気を引き出し、その人が本来もっている能力を発揮させることはリーダーにとって必要な能力だと思いました。

そのためには、「私はこの人たちのやる気を引き出し本気にさせることで、能力を発揮させる!」とコミットしていることが大切なのでしょうね。

これだけは知っておきたい!『タックマンモデル』

*研修用資料として使いたい場合はこちらからダウンロードしてお使いください。

集団・チームの成長プロセス(タックマンモデル)

集団がグループからチームへと変わっていく時に、このプロセスをたどると言われています。「今自分たちの組織はどの段階だろうか?」と客観的に眺めることで、次の段階に進むための課題が見つかるかもしれません。

わかりやすくするために、学校のクラス編成を思い出しながらお読みください。

第一段階:形成期(結成期、お互いに様子見をしている)

クラス替えで、同級生たちがどんな人たちなのかわからない。自分はどう見られているかが気になる。どんなキャラでいけばいいのか・・・と迷う時期かもしれません。「あの子、可愛いな」とか思ったりもします(笑)

この時期にリーダー(先生、学級委員)が行うべきことは、コミュニケーションの量を増やすことです。まずは数を増やすことで、新しい環境に触れる機会が増えますし、コミュニケーションの機会があれば、その中で勝手にお互いを知り始めます。

知らない人同士が集まるオープンセミナーでは、最初のほうは自己紹介だけでなく、グループディスカッションの機会を多く作り、お互いを知り合えるようにします。

社内の雰囲気が良くないという相談に対してまず提案するのも、コミュニケーションの機会を増やしてみることです。もしかしたら形成期ではないかもしれませんが、やってみれば、「あっ、形成期を経てなかっただけなんだ」と気づくことが多いです。
週に1回だけ、お互いの趣味や特技・苦手なことを発表しあう機会を作っただけで、雰囲気が良くなった組織もあります。

大切なのはコミュニケーションの質ではなく量ですから、リーダーとして量を増やすためのアイデアをどれだけ出せるかにかかってますね。
アイデア出しが苦手な人、多いですから。この機会にアイデアを出す練習もしてください!

第2段階:混乱期(意見の主張、ぶつかりあい)

授業がはじまり、少しずつ仲良しグループができてきますね。「やっぱりあの子可愛いな」と再認識しはじめる時期でもあります(笑)
クラス内で授業だけをしていたら(仕事でいうと、個々がそれぞれの仕事をこなしているだけなら)、混乱期が訪れることはあまりないかもしれません。

「喧嘩も意見のぶつかりあいもないし、ラッキー(ポッキー)」と思っちゃあいけません。
だって、組織がまとまっていくためには必ずこの混乱期も通るので、混乱期が起こっていないということは、チームが形成がスタートされていないことになります。

その場合は、全体で取り組む必要があるなんらかの課題を与える必要があります。学校では文化祭、体育祭、クラス対抗音楽発表会がチーム形成するための課題ですね。

余談ですが、高校時代の音楽発表会で僕らのクラスは『ぞうさん』の輪唱をしました。「ぞーぉさん」と誰かが歌い、少し遅れて「ぞーぉさん」と次の人が歌うやつです。相当ふざけた学生で、今でも馬鹿にされる思い出です。

リーダーやファシリテーターの手腕が問われる時期でもあります。うまくいくと、この混乱期か次の標準期で「そもそもこのゴールってどうなの?」「自分たちは何がしたいの?」など、ゴールやビジョンに対する問いが生まれてきたりします。

リーダーが伝えたゴールに対して疑問や不満を持たれるので、「あんた!俺の言うことにケチつけんのかい?」と思うかもしれませんが、このタックマンモデルを理解しているリーダーは「しめしめ、イヒヒ」と思うはずです。

ビジョンもゴールも、リーダーが伝えただけではメンバーの中で肚落ちしてません。しかし問いはその人の中から生まれてきますから、疑問や不満は、メンバーたちが主体的にビジョンやゴールを自分のものにしていくチャンスになります。

そのような状況を見守りつつも、ところどころで対話を促すリーダーがいると、チームの関係性が深くなっていきます。リーダーシップが一番問われる次期です。

ちなみに、この形成期から混乱期、標準期までのスピードを短縮する手法として、アクションラーニングという会議手法があります。別の機会にご紹介しますね。(そういって、忘れていたらご指摘ください!)

第3段階:標準期(それぞれの役割やチームのルールが明確になる)

顔で判断していたけれど、「この子のほうが正確いいし可愛いかも」と思い始める時期かもしれません。

文化祭で劇をすることが決まり、役割も決めます。誰が主役をやって、舞台をやってという役割だけでなく、リーダーシップをとる人が現れたりムードメーカーが現れたりします。
チームメンバーのキャラがわかってきて、様々な状況に対してメンバーがどういう対応をするかがわかってきます。

第4段階:達成期(能力の発揮と成果)

お互いの短所や長所もわかってきて、お互いを受け入れ信頼はじめ、協力もはっきりとみられるようになります。
標準機では甘かったゴールに対するコミットがはっきりしてきます。ゴールを達成しようとベクトルがそろう時期です。

*タックマンモデルについては、第5段階の散会期もあるそうですが、僕はこの4段階を習いました。

チームとして機能させるためにはからはじめたらいいのか?


メンバー(社員、スタッフ)の相互作用、相互支援そして、成果に対するコミットがあり、「1+1+1+1+1=10」となったらいいですよね。

では、これまでチーム作りを意識してなかったリーダーは何から始めればいいのでしょうか?
チームビルディングと言われてもイメージがわかない、「チームビルディング研修受けたことある?」と聞かれたら、「何すれ、そもそもそういう研修があること知らない」、タックマンは知らないけれどパックマンなら知っている(笑)という状況でしたら・・・

①まずはタックマンモデルについて調べる

チームビルディング研修を担当している企業のホームページを見るとタックマンモデルやそれぞれの時期で何が起こり、リーダーは何をすべきかがまとめられています。
それらを読み、「今、うちはどの時期なんだろう?」と自分に問う。メンバーやスタッフを巻き込みたいなら、「こんなのがあるけど、うちってどの状態なんだろうね?」と問うことから始めてはいかがでしょうか?

②過去を振り返る

時間とお金の余裕があるのなら、コンサルタントにお願いしたりチームビルディング研修を受けるのもありだと思います。
が、そんなことをしなくても、過去になんらかのプロジェクトや取り組みの中でチームが形成されていくプロセスがあったと思います。
その時のことを振り返ってみてはいかがでしょうか?

頭で学んだ知識も、実体験に照らし合わせて振り返れば、学びが腹落ちすると思います。

そうすることで、タックマンモデルの理解が進むでしょうし、自身の組織の強みや弱みが見えてるかもしれません。
それを今後に生かせばいいのです。

この機会にコルブの【経験学習モデル】も勉強されるといいかもしれません。ネットで調べればたくさん情報がでてきます。

③対話の機会を作る

ここまで読んでいるのなら、チーム作りへの関心がある人だと思います。リーダーの中にはついついひとりで頑張ってしまう人がいますが、チームを作るのであれば、メンバーの協力が欠かせません。

チームビルディングについて皆で知識をインプットし(まずはタックマンモデルなどを勉強すれば十分だと思います。)、それをもとに、「あーでもない、こーでもない、こうかもしれない、うちはいいところいっぱいだよね」など、対話する機会を作れば、メンバーの中にもチームビルディングへの関心が生まれると思います。

ここまで行えば、「チーム???」と思っていた人にとっては、大きな進歩になるでしょう。

そして・・・・

④リーダーとは?自分の役割とは?を問う

ここまでやっちゃいましょう。リーダーとは何か?という定義、マインドセットを明確にする必要があります。

「リーダーとは?」と聞かれて、「リーダーとは言葉の通り、リーダーだ!リコーダーとは少し違うぞ!(寒い親父ギャグ)」と答えるのではなく、「リーダーとは●●という考えのもと、XXする人だ」というあなたの中の定義を明確にしませんか?

言葉の定義、マインドセットが変われば行動も成果も変わります。

リーダーとは・・・
「成果に向かってチームをぐいぐい引っ張る人」と定義していれば、頼もしさがありますが、ワンマンになることもあります。
「メンバーに課題を乗り越える力をつけさせる人」と定義していれば、メンバーの課題解決スキルや人間的成長に意識が向かう人になると思います。
「メンバーの目標達成に奉仕する人(サーバントリーダーシップ)」と定義しれいれば、メンバー主体で組織運営をし、自分は裏方にまわる行動をとるでしょう。

以上、終わります。


㈱アグサでファシリテーター養成合宿を受けたときの写真です

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リスクをとるとは?

笑顔を見せることは、間抜けと思われるかもしれない
涙を流すことは、弱虫とみなされるかもしれない

他人と知り合うことは、トラブルに巻き込まれるかもしれない
考えや夢を語ることは、誰かにそれを盗まれてしまうかもしれない

誰かを愛することは、その誰かに愛されないかもしれない
生きていることは、いつ死ぬか判らない
信じていることが、間違っているかもしれない

私たちの日常は、実は、様々なリスクと背中合わせ

ではそのようなリスクは避けるべきでしょうか?
いいえ、リスクは取るべきです

何故なら、
人生における最大の落とし穴は、
何もリスクを取ろうとしないところに在るから

誰もが、悩みや苦しみなどのリスクを避けたいと思うだろうが
もし避けてしまったとしたら、そこから得られたはずの
学びや感性、変化や成長、愛や生き方そのもの、など身にすることは出来ない

その生き方は、「リスクを取ろうとしない」と言う鎖に縛られた
《自由を失った奴隷》である

リスクを取ろうとする者こそが、自由で有り得る
Only a person who risk is FREE!

作者不詳

足柄グリーンサービス配布資料より

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株式会社アグサ野外教育部