嘱託産業医依頼を受付中です

育児介護休業法の改正のポイント

愛知県で産業医事務所をしております産業医の杉浦です。
2022年の改正により企業にはいくつかの義務が課せられました。実際、このような法改正を知らない企業もまだまだ多いようです。しかし、知らないではすまされません。


というのは、今は多様な状況(育児が必要な人、親の介護が必要な人などなど)の人材が働きやすい環境や制度を整備する働き方改革が求められています。
  *働き方改革を経営戦略として進めていきたい方はこちらをご覧ください。
  *育児介護休業法の詳しい内容については社労士や労基署などの専門家にお尋ねください。


働き方改革に前向きに取り組んだ企業には人が集まり、「法改正への対応なんてしなくても、バレなければ大丈夫!」という企業には人が集まらなくなっています。
というのは就活生のアンケートからも、就職先を決める際にそのような制度が整備されているか(もちろんホームページにそのことがちゃんと書かれているかチェックされていますよ!)、整備されているだけでなく前向きに運用されているかなど、口コミサイトなどで確認していることが分かっています。

現在は企業は選ばれる時代であり、適切に制度を作り運用し、そして対外的な周知をしっかりと行っていないと選ばれない時代だということに危機感を感じていただきたいと思います。

以下にchat GPTを活用した簡単なまとめをのせておきますが、特に大切なポイントをまず知りたい方は、
3. 雇用管理の措置 をまずご確認ください。

1. 男性の育児休業取得促進

出生時育児休業(パパ・ママ育休プラス)の新設

  • 取得可能期間: 子どもの出生後8週間以内
  • 取得回数: 父親と母親それぞれ2回まで、計4週間まで取得可能
  • 給与補償: この期間中、一定の条件を満たせば給付金が支給される

パパ・ママ育休プラスは新設された制度で、現行の育休制度にプラスして使うことができます。
 厚生労働省のパンフレットはこちら⇒「取るでしょ! 育休」
 *パンフレットの一部を掲載しておきます。
 *会社で育休制度を周知するために、まずはこのようなパンフレットの掲示もよいと思います。

2. 介護休業の柔軟化

介護休業の分割取得

  • 取得可能回数: 介護休業を3回に分割して取得可能
  • 期間: 介護を必要とする家族がいる場合、93日間の介護休業を3回まで分割して取得できる
  • メリット: 短期間の介護ニーズに対応しやすくなる

3. 雇用管理の措置

育児・介護休業取得の促進

  • 企業の義務: 育児・介護休業の制度を周知し、従業員が取得しやすい環境を整備
  • 具体的な措置: 取得希望者への相談対応、管理職への教育など

詳しくは記事最後のリンクにあるリーフレットを見ていただきたいのですが、

本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する以下の事項(リーフレットをご参照ください)の周知と休業の取得意向の確認を、個別に行わなければなりません。

短時間勤務制度の充実

  • 対象者: 育児や介護を行う従業員
  • 提供される制度: 短時間勤務制度、フレックスタイム制、在宅勤務制度など
  • メリット: 従業員が育児や介護をしながら働きやすくなる

4. 罰則の強化

育児・介護休業の取得妨害への罰則強化

  • 違反行為: 不正に育児・介護休業を拒否する行為
  • 罰則内容: 違反した企業に対する罰金や行政指導の強化

「うちの会社にはそのような制度がないからパパ育休なんてとれません」と言われる方がたまにいますが、これは法律で定められた制度のため、会社に制度がなくても取得することができます。
人員不足で困っている会社にとっては、きつい法律かもしれませんが、法律を守らなければ労働基準監督署から指導場合によっては罰金が科せられます。

労働基準監督署による監査強化

  • 監査内容: 企業の育児・介護休業法遵守状況
  • 指導・罰則: 違反があった場合の行政指導や罰則が厳格化される

労働基準監督署による指導や罰金だけでなく、もし「うちの会社にはそんな制度がない」と拒否した場合、社員が会社を訴える可能性もあり(民事訴訟)、裁判所から損害賠償を命じられることもあります。

育児休業中の収入について

「休業したら収入がなくなる」と心配される人もいるかもしれませんが、こちらのリーフレット「イクメンのススメ」(P4参照)に説明があるように、育児休業給付金が健康保険から支給されます。
休業中は社会保険料が免除されるため、休業前の8割の手取り収入がはいります。
また、給付金は非課税なので確定申告する必要がなく、給与収入が減った分、場合によっては保育園料が安くなり、むしろ金銭的にはプラスになることもあります。
 *詳しくは税務署や社会保険事務所などにご相談ください。

まとめ

これらの改正点は、育児や介護を行う従業員がより働きやすい環境を整備し、企業のサポートを強化することを目的としています。企業はこれらの改正に前向きに対応することで、従業員のワークライフバランスを支援し、従業員満足度の向上や離職率の低下を目指すことができます。

また、出産後の女性の産後うつの原因は充分な睡眠がとれていないことです(産後うつによる自死は産後女性の死因の1位です)。会社が制度を説明し、安心して男性社員でも育児休暇をとれるよう支援することで、社員の奥様の命を守ることができるのです。
今、働く人(人的資産)を守る姿勢が強く求められています。そして対応の先延ばしによって困るのは労働者だけでなく、事業者もです。

2025年にも法改正があり、企業にはますます多様な状況(お子さんが小さい人、親の介護が必要な人など)の人が働きやすい環境や制度の整備が求められています。

つまり、今働き方改革を行わないと労働者から選ばれなくなり(そうなると採用コストが大きくなります)、場合によっては労基署から指導や勧告を受けることもあります。

参考までに厚生労働省が行った調査結果の一部をのせておきます。
 *従業員1000人超の企業が対象
・アンケートに回答した企業の男性育休取得率は令和5年度で46.2%(令和4年度は17.13%)
・育休取得率の開示により「社内で男性育休を取得する人が増えた」「男性育休取得に対するポジティブな変化があった」「採用応募人数の増加」といった変化があった。
 *令和6年現在、育休取得率のホームページなどの開示は1000人超の企業で義務となっていますが、今後300人超の企業で義務化される予定です。
・男性育休取得率向上の取組を行うことで従業員満足度やワークエンゲージメントの向上が見られた

男性育休取得率の開示が1000人超(いずれ300人超の企業)の企業でのみ義務化されているからといって、開示していいけないわけではありません。
社員規模50人~200人ほどであっても取組みを行い、その結果を開示することでたくさんのメリットがありそうです。ここに早く取り組んだ会社と取り組んでいない会社で、採用数への変化が起こりそうですね。

【参考】
厚生労働省の育児介護休業法の改正ポイントのリーフレット