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食中毒が発生した時の対応は?

会社の飲み会後に、ある飲食店に行ったのですがその翌日に参加者全員が腹痛、下痢になりました。
どうしたらよいでしょうか?
という相談です。

①まず病院を受診して診断を受けてください。保健所が対応してくれることもあります。
同じ飲食店に行った人が同じ菌に感染していたことがわかった場合、食中毒が疑われるため菌やウィルスの種類に限らず最寄りの保健所に届け出る義務があります。

食中毒の代表的な菌は以下になります。

細菌: サルモネラ菌、カンピロバクター、病原性大腸菌(O157など)、リステリア、ブドウ球菌、クロストリジウムなど
ウイルス: ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど
寄生虫: アニサキスなど


食中毒のおもな症状と潜伏期間は以下になります。(東京都保健医療局HPより)

②もし医師が届け出をしてくれなったら(そんなことは普通はないと思いますが)、自身で保健所に連絡しましょう。

③保健所に連絡をする際はできるだけ情報をそろえておきましょう。
 具体的には、
 ・症状が出た時の状況
  (いつどのような症状があったか、受診した医療機関の名前など)
 ・原因と考えられる施設の名前と場所原因と考えられる施設で食べたメニュー
 ・同行者の名前、連絡先、住所等
 ・症状が出た日から7日前までの食事内容
保健所からも上記の内容を聞かれると思います。

保健所はどのような時に飲食店の調査をしてくれるか?

・複数の患者から同一の病原体が検出された場合
・患者の共通点として、同じ飲食店での食事歴がある場合
・症状の発症時期が近接している場合
・医療機関からの届け出や患者からの申し出がある場合
・食中毒の可能性が高いと判断される場合
・公衆衛生上のリスクが高いと判断される場合

もし保健所が調査をしてくれないとしたら、以下のような理由が考えられます。
・患者数が少ない、または散発的である
・症状の発症時期にばらつきがある
・他の感染経路の可能性が高い(例:家庭内感染)
・既に原因が特定されている、または調査中の別の事例との関連性がある

参考:「食中毒処理要領」及び「食中毒調査マニュアル」の改正について

上記マニュアル(文字が多すぎてわかりにくい!)をざっと読む限りでは調査をした方が望ましいようですが、実際は調査するかどうかの基準は各自治体に委ねられているようです。
ですから、調査をしてもらいたい場合は症状など詳細を伝え、調査を再度依頼しましょう。

参考までに上記マニュアルの一部を抜粋しておきます。

3 施設調査
原因施設として疑われる施設に対しては、速やかに立ち入り調査を行い、検食(食材を含む)及び施設のふき取り検体等を採取するとともに、仕入元、出荷及び販売先、製造又は加工に関する記録等の資料の確保を行うこと。
特に、ふき取り検査や排水の検査は、施設の消毒後は意義を失うので、消毒前に必要な検体を十分確保すること。

食中毒の原因施設として疑われる営業施設等の調査は、次の点に注意して行うこと。

(1) 調査対象施設への立入り

Ⅱ項の届出の内容に基づき、住所、屋号及び電話番号等が一致するかを確認してから立ち入ること。

(2) 食材の仕入れ及び食品の提供に関する調査

① 食材の仕入元の住所、電話番号等を記載した名簿やリスト、仕入年月日

② 献立別(給食、弁当、会食料理等のメニュー)の提供、調理、加工及び製造の数量

③ 施設の利用者又は弁当等の購入者の人数等

④ 購入者、販売・提供先、喫食者の住所、電話番号等を記載した名簿やリスト

⑤ 原則として発症時点から7日間、必要に応じてそれ以前に遡り調査対象者が喫食した食事の献立(メニュー)

(3) 食品の製造・加工・調理、販売過程の調査(輸送過程も含む)

次の事項を詳細に調査し、それぞれの食品等(食材を含む)について汚染経路、混入経路、増菌の機会、調理ミス等の有無の確認を行うこと。

① 時系列でみた食品の製造・加工・調理過程における食品等(食材を含む)の取扱い手順及び内容

② 時系列でみた食品の製造・加工・調理過程における従事者の作業動線

③ 調理済み食品の保管方法及び時間、販売又は提供方法等

(4) 施設の衛生状態の調査

① 法第50条(管理運営の基準)及び第51条(営業施設の基準)に基づく基準、並びに衛生管理に関する指導事項の遵守状況に係る調査を行うこと。

ア 営業施設の構造・設備(区画、面積、換気、防そ・防虫、冷蔵設備、洗浄設備、給湯設備、器具等の整備・配置、保管設備、運搬具、計器類、温度管理等)

イ 施設及び周辺の清掃状況、並びに作業場内の環境保守の状況

ウ 機械器具類の維持管理状況

エ 室内の温度及び湿度管理

オ 廃棄物等の処理状況

カ 食材等の仕入れ及び製品の保管状況

キ 添加物、殺虫剤及び殺菌剤等の使用状況ならびに管理状況

ク 自主検査の実施の有無及び成績書

ケ その他衛生管理に係る自主点検記録等

② 給水設備及び使用水の衛生状況の点検

ア 残留塩素の測定(簡易測定キット等を使用)

イ 使用水が水道水以外の場合については、水源の確認と水源を汚染する要因(井戸の構造、深さ等を含む)の有無について

ウ 貯水槽の点検、汚染要因(亀裂、漏水箇所の有無、マンホールの状態等)の把握

エ 水質検査の結果、貯水槽の清掃記録等

③ 排水処理方法と維持管理状況の確認

④ そ族、昆虫等の駆除記録、生息状況の点検・調査

⑤ 異物混入の可能性の調査

⑥ 調理場内に出入りする者の確認等

(5) 調理従事者等についての調査

① 調理従事者の健康状態

② 検便等の健康診断の実施状況の確認

③ 流行性疾患の有無

④ 海外渡航歴の有無

⑤ ニキビ、手荒れ、キズ、化膿性疾患等の有無

⑥ 調理上好ましくない習慣の有無

⑦ 食事の嗜好(生カキ、生肉、生卵等)

⑧ 共通食の喫食(賄い等)

⑨ 家族等の健康状態

ノロウィルスの感染力について

ある集団食中毒事例において、調理従事者の衣服からノロウイルスが検出されました。この事例では、保健所が行った疫学調査により、ノロウイルスが検出された調理従事者が3月6日から下痢や嘔吐などの症状を呈していたことが判明しました。
この事例は、調理従事者の衣服、特に袖口などがノロウイルスに汚染され、それが食品を介して集団食中毒を引き起こした可能性を示唆しています。調理従事者が症状を呈していながら業務に従事し、その際に衣服に付着したウイルスが食品を汚染したと考えられます。
ノロウイルスは非常に感染力が強く、わずかな量でも感染を引き起こす可能性があります。また、ノロウイルスは環境中で長期間生存可能であり、汚染された表面から容易に感染が広がる可能性があります。

産業医 杉浦

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