本件は、高血圧の基礎疾患を有していた営業係長の脳出血による死亡につき、会社の安全配慮義務違反と、直
属の上司であった取締役の注意義務違反が認められた事案である。過重労働との関係では、実効性ある業務軽減
措置を講じることの重要性を示唆する事案である。
(産業保健21より、安西法律事務所の木村恵子弁護士のまとめより)
この事件は岩手県奥州市にある機械部品製造会社「株式会社サンセイ」で働いていた従業員が2011年に過労が原因で脳幹出血を発症し、亡くなったことに関するものです。
なぜ「サンセイ事件」ではなく、「サンセイほか事件」と「ほか」となっているかというと、脳幹出血の原因が仕事が原因の過労(長時間労働)であり会社の安全配慮義務違反だけでなく、亡くなった従業員の上司であった役員個人も被告として責任を問われたからです。
正直、長時間労働に対して「残業時間の制限が望ましい」と産業医の意見を述べた場合に、上司が職場に対して「残業を少なくするように」とか「早く帰るように」と指示することがあります。
しかし、仕事が多いから残業をしているわけで、特に管理監督者となると部下を早く帰すために本人がその分の仕事をして残業が増えてしまうなんてことはよくある話です。
ですから、多くの会社が行っている具体性に欠けた指示はとてもリスキーです。
会社を守るためにもそして従業員を守るためにも、このような判例から会社としてすべきことを学んで欲しいと思います。
忙しいから残業をしているわけであり、ちょっとした指示だけで残業が減るわけではありません。
働き方改革を含め、真正面から会社が抱える課題に向き合うことの必要性を考えさせられる裁判です。
産業保健21第106号に掲載されたサンセイほか事件の記事はこちら
*リンク切れになっているかもしれません
安全衛生委員会で活用できる簡単にまとめた資料を作成しました。
こちらもご活用ください。⇒サンセイほか事件
残業削減のためには、人を増やすことがてっとり早い方法と思うかもしれませんが、人を増やすのは最終手段だと思います。(もちろん例外もあります)
まずは会社内の働き方を細かく分析し、細分化することで解決策が見えてきます。
その上で人を増やした方がうまくいく印象があります。
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