愛知県で産業医をしております杉浦です。
外来でよくある光景
「なんか胸やけが多い、胃酸が逆流しているのかなぁ」「血圧の治療を受けているけどなかなか下がらない」「夜中に何度もトイレに行かなければならずよく目が覚める」
このような症状で悩んで病院に行ったら、
患者:「夜中によくトイレで目が覚めて困ります」
医師:「年齢のせいだから仕方ないですよ」
診察終了!
なんてことがあるかもしれませんが、実は上にあげた3つの症状の背景に睡眠時無呼吸症候群が隠れているかもしれません。
そのせいで夜間頻尿になることは充分あります。
睡眠時無呼吸症候群を発見するには
睡眠時無呼吸症候群は運転中の眠気から重大事故につながることがありますし、仕事のパフォーマンスにも大きく影響するためできれば治療を受けて(人によっては体重を減らすことで改善することがあるため、普段の食生活や運動も大切です)早く治して欲しいと思います。
私たち産業医などの産業保健職は働く人を健康リスクから守るために、「この人には睡眠時無呼吸があるのではないか?」と疑いことが大切ですが、健康診断の問診表に昼間の眠気ありと書いていない限り、なかなか気づけません。
ですから、睡眠時無呼吸についての情報を提供しますので、みなさんの方から「先生、私睡眠時無呼吸があるかもしれません。面談したいです」と来ていただきたいと思います。
働く人「昼間に眠いしよくいびきをかいていると言われます。仕事中も眠くて・・・」
産業医「昼間の眠気で仕事に支障をきたすくらいなのですね。眠気や夜間のいびきがあるからといって睡眠時無呼吸が必ずあるとは言えませんが、心配でしたら調べてみるといいですね。いびき以外に、ご家族から寝ている時に呼吸がとまっていて窒息しているように苦しそうな感じやあえぐような苦しい呼吸をしていると言われたことがありますか?」
働く人「呼吸が止まっているように見えるとよく言われます」
産業医「睡眠時無呼吸の可能性が強くなりましたね、一度検査してみますか?」
このやりとりにあるように、昼間の眠気は睡眠時無呼吸の可能性を考えるきっかけにはなりますが、ご家族などからの「呼吸が止まっているように見える」という情報の方がより無呼吸を疑います。
一緒に寝ている人がいない場合は、睡眠アプリで睡眠中を録音することが可能なものもありますので(私はBRAIN SLEEP COIN というアプリを使っています)それらで呼吸が停止しているような様子がないか確認してみましょう。
睡眠時無呼吸の検査方法は?
自宅でできる検査と入院して行う検査があります。
自宅で行う睡眠時無呼吸の検査
睡眠時無呼吸を診てくれる病院に行くと、業者さんに連絡をとってくれたりして、検査用の機器を持ってきてくれます。それをつけて眠ることで、睡眠中に1時間当たりに何回、10秒以上呼吸が止まっている(あるいは低呼吸になっている)かを調べることができます。
自宅でできるのでハードルは低いですね。
ただし、簡易的な検査のため正しく検査できていないことがあります。
機械をつけた後をずっと計測されるのですが、その間に寝ていたのか寝ていないのかは機械ではわかりません。
詳細は省きますが、重症な睡眠時無呼吸があっても軽症・中等症と診断されることがあります。その場合、CPAPという鼻につけて空気を送る治療の保険適応でなくなります
無呼吸または低呼吸(10秒以上)が1時間あたり
・5~15回:軽症
・15~30回:中等症
・30回以上:重症
と分類されるのですが、自宅でできる簡単な検査の場合は重症でさらに1時間あたり40回以上の無呼吸または低呼吸がないとCPAPの保険適応にならないのです。
本当はCPAPの適応になるくらい重症な無呼吸があるにも関わらず、「軽症ですね。ダイエット頑張って!」と言われて終わり!なんてこともあります。
これが自宅でできる簡易的な検査の欠点です。
入院して行う睡眠時無呼吸の検査
自宅でできる簡単な検査でCPAPの適応ではないと言われても、症状が強くお困りであるならば入院して行う検査をおすすめします。
入院して終夜睡眠ポリグラフ(PSG)という検査を行います。
「仕事があるから入院なんてできない!」と言われるかもしれませんが、仕事終わりに病院に行き、検査を終えたら朝会社に行くことができるよう対応しているところもあります。
また、放置することで昼間の眠気だけでなく、集中力の低下、血圧の上昇、不整脈などのいろんな弊害がありますので、治療により労働生産性があがる可能性がありますので、仕事よりも検査を優先して欲しいと思います。
睡眠時無呼吸症候群の(入院)検査をしてくれる病院リスト
簡易検査をしてくれるところは山ほどありますが、入院検査をしてくれるところは限られています。
検査機器のレンタルをしているTEIJINさんが一覧を作成してくれていますので、そちらでご確認ください。
県名をクリック⇒「精密検査」をクリックすると、入院検査もしてくれる病院を探すことができますので、参考にしてください(TEIJINさんありがとうございます!)
産業医 杉浦
追伸:
私も昔重症の睡眠時無呼吸で仕事中も運転中も眠くて眠くて仕方なかったです。
CPAPの治療をうけ(保険適応でレンタル料と診察代を合わせて毎月5000円くらいだったと思います。)、むちゃくちゃ快適になりました。仕事の質は2倍以上になりました。*現在は減量して無呼吸がなくなったのでCPAPは行っていません。
「機械をつけて眠るなんて!」と言われることがありますが、睡眠時無呼吸で悩んでいた人からは「こんなに日々が快適になるならもっと早く治療を受ければよかった!」「あれ、人生変わりますね!」と言われたこともあります。
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