国の2026年の骨太の方針(「経済財政運営と改革の基本方針」 )では、女性活躍(女性の労働参加や役員登用 )以外に、「働く人の手取りを増やす(賃上げ)」「地方の生活環境を守る(「地方創生2.0」 )」「防災体制を固める(「防災庁」の創設準備 )」といった国民生活に直結する項目が同時に決定されました。
今回は企業にとって大きな課題となっている女性活躍について考え、中小企業にとってはより早く取り組むことのメリットを考えていきたいと思います。
2001年、当時の小泉純一郎首相のもとで初めて作成されました。 小泉首相が「構造改革に向けた骨太の議論をしよう」「しっかりした骨太の方針を出してほしい」と発言したことがきっかけで、そのままメディアや国民の間で「骨太の方針」と呼ばれる定着した通称となりました。
政治ニュースで「骨太の方針が閣議決定された」と流れたら、「来年の税金の使い道の方向性が決まった」と読み替えると分かりやすいと思います。
1.企業が抱える課題
「女性が長く活躍できる職場にしたい」と考えていても、実際の現場では次のような壁にぶつかることが少なくありません。
まず、就職・結婚・出産・育児・キャリア再構築という女性のライフステージの節目ごとに、働き方を変えざるを得ない場面が訪れます。そのため企業はマクロな視点での課題を参考にして、今後の対策を考えていく必要があります。

出典元:https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r08/zentai/html/zuhyo/zuhyo00-07.html
かつての女性の労働力人口比率が結婚・出産期にあたる25〜34歳で落ち込む「M字カーブ」はほぼ解消し、第1子出産前に働いていた女性の約7割が、出産後も就業を継続しています。

出典元:https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r08/zentai/html/zuhyo/zuhyo00-09.html
しかし、正規雇用比率で見ると、女性は25〜29歳をピークに、年代が上がるにつれて正規雇用比率が低下していく「L字カーブ」が依然として残っています。
つまり「辞めはしないけれど、非正規に移る、あるいは昇進のレールから外れる」という形で、出産・育児を機に「正社員として働き続けられない」という課題が浮き彫りになりになっています。
主な原因は下記です。
・出産・育児による離職:残業が多い働き方を続けられず退職を選ぶ
・再就職の難しさ:子育てをしながら正社員として再就職をするハードルが高い
・職場環境・制度の不足:制度が整っていなかったり、整っているとしても取得しづらい雰囲気が職場にある
現場レベルでは下記のような具体的な困りごともあります。
・育休取得者の代替要員の確保
・復職後の時短勤務者への業務の割り振り
・「この会社で女性が管理職まで続けている前例がない」というロールモデル不在
といった問題です。
特に中小企業では、こうした課題に対応する専任の人事担当者や、代替要員を確保する余力そのものが乏しいのが実情です。「女性活躍が大事なのは分かっているが、手が回らない」というのが、多くの経営者の本音ではないでしょうか。
もうひとつ、見落とされがちなのが「病気・体調」という観点です。
女性のライフステージには、
・月経随伴症状
・婦人科系疾患(子宮内膜症・子宮筋腫等)とその治療
・妊娠・出産
・そして更年期症状
という、身体的な負荷の大きい節目が繰り返し訪れます。
特に更年期症状(のぼせ、不眠、集中力低下、気分の落ち込み等)が現れやすい40代後半〜50代は、多くの企業で管理職への登用が検討される年代とちょうど重なります。
産業医として現場を見ていても、「本人の意欲や能力の問題」だと思われていた不調が、実は更年期や婦人科系疾患による体調不良だった、というケースは珍しくありません。こうした健康課題への理解が職場になければ、女性自身が昇進を辞退したり、治療と仕事の両立を諦めて退職したりすることにつながってしまいます。
女性管理職比率が上がらない理由は、まだまだ男性中心の考え方が根深く残っていて、女性のライフステージと疾患への理解がされていないままに、ただ女性管理職を増やそう!と頑張ってしまっているという構造的な問題があります。
2. より大きな視点(国の方針)との関係
こうした課題は、個々の企業の努力不足というより、国全体で解決が急がれている構造的な課題として位置づけられています。
2026年4月には女性活躍推進法が改正され、常時雇用する労働者が101人以上の企業に対し、「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の情報公表が新たに義務付けられました。あわせて法律自体の期限も2036年まで延長されています。100人以下の企業は今のところ努力義務にとどまりますが、対象範囲を広げてきたこれまでの改正の流れを踏まえると、中小企業にとっても「いずれ自分ごとになる話」だと捉えておく方が現実的です。
2026年3月13日に閣議決定された第6次男女共同参画基本計画でも、管理職に占める女性の割合を引き上げるという目標が引き続き掲げられています。
しかし実際は、上場企業の女性管理職比率は平均1割に満たず、目標を達成できている企業はごく一部にとどまるというのが実態です。つまり、国が繰り返し目標を掲げ、法律で公表を義務化してでも動かそうとしている、それだけ変化が進みにくいテーマだということです。
もし女性や高齢者の労働参加が進まなかった場合、2040年には約6,002万人まで減少する可能性があると言われています。(2022年時点では6900万人)
女性が結婚・出産を経ても働き続け、能力を発揮できる社会にできるかどうかが国に与えられた課題であり、同時に企業が優先的に取り組まなければならない課題となっています。
3. 女性のライフステージに合わせた取り組みのメリットなど
冒頭でもお伝えしたように、第1子出産前に働いていた女性の約7割が、出産後も就業を継続していますが一方で、正規雇用比率で見ると、女性は25〜29歳をピークに、年代が上がるにつれて正規雇用比率が低下していく「L字カーブ」が依然として残っています。
つまり、妊娠・出産を機に非正規雇用に移る、キャリアの中断が起こっており、そして女性管理職のロールモデル不在のため若手女性が離職していき、採用競争力の低下にまでつながっているという構造が指摘されている企業も多数存在してます。
ですから、L字カーブを防ぎ、女性がキャリアを断念することなく正規社員として働き続け、またロールモデルとなる女性管理職の育成そしてそのための環境整備、「女性に管理職は難しい」などといったアンコンシャスバイアスへの対応が必要になってきます。
もしもこれらに積極的に戦略的に取り組まなかった場合、会社全体でこの課題感を共有して取り組まなかった場合、
・14万円のコストの差

ケースB(育児休業を取得後3年間は1日2時間短縮する短時間勤務)では、企業OGなどを活用できた場合であり、少し無理がある感じがしますが、それまでに培われた地s機や経験の損失を防ぐことができると考えると、短時間勤務制度を整えることで(そしてもっと大事なのはその制度を利用しやすい職場環境にすることで)得られるメリットは大きいと思います。
積極的に取り組みを行った場合のメリット
・生産性・商品開発面のメリット:女性目線での視点を取り入れることでヒット商品の開発、短時間勤務者の視点による時間管理能力の向上などの報告がされています。
・定着率・採用競争力のメリット:「女性が働きやすい職場らしい」という評判が採用競争力につながる可能性があります。実際に私もそのような事例を多数確認しております。
・持続可能な組織づくりというメリット :女性活躍への積極的な対応経験は、それが女性に限った話ではなく育児・介護・治療など何らかの事情を抱えるすべての従業員にとって働きやすい職場をつくることにつながり、結果として組織全体の持続可能性を高めます。
中小企業にとっては大きなチャンスです
「女性活躍」と聞くと、大企業が体制やコストをかけて取り組むテーマだと感じるかもしれません。しかし実際には、中小企業だからこそ迅速に動ける場面が数多くあります。
まず、意思決定の階層が浅いという強みがあります。
大企業では制度変更に稟議や労使協議など複雑なプロセスが必要になりますが、中小企業では経営者の号令ひとつで、勤務時間の柔軟化や業務の棚卸しといった対応をすぐに始められます。内閣府の資料でも、仕事と生活の調和に関する取り組みを進める上で「中小企業ではトップのリーダーシップによる加速的な取組が有効」とされており、これは中小企業ならではの強みとして積極的に捉えるべき指摘です。
また、従業員数が少ないからこそ、1人の離職・定着が組織に与えるインパクトも、対応の効果も、どちらも大きく現れます。50人規模の会社で残業を1人1日30分減らすだけでも、年間で約1,180万円のコスト削減につながるという試算があるように、中小企業では小さな取り組みの効果が数字として見えやすいのです。
さらに、女性活躍推進法の公表義務は現時点で101人以上の企業が対象であり、100人以下の企業は努力義務にとどまっています。これは裏を返せば、努力義務のうちに自主的に取り組んでおくことで、「法律で仕方なく対応した会社」ではなく「早くから取り組んでいた会社」という差別化ができるということでもあります。人材の奪い合いが厳しくなるこれからの数年、この差は採用の現場で確実に効いてきます。
健康面の対応についても同様です。大企業では産業医が面談や健康診断後の事後措置に追われ、現場の状況を細かく把握しきれないことも少なくありません。
一方、中小企業では経営者や人事と産業医の距離が近く、「あの部署のあの人が最近しんどそうだ」といった情報が伝わりやすいという特徴があります。この距離の近さを活かして、更年期や婦人科系の不調について相談しやすい雰囲気づくりや、個別の事情に応じた柔軟な対応を、大企業よりもずっとスピーディーに進められます。
女性のライフステージに寄り添う職場づくりは、体力のある大企業から始まる話ではありません。むしろ、意思決定が速く、1人ひとりの存在が組織に直結している中小企業だからこそ、着実に、そして早く形にできるテーマだと言えます。
参考情報



出典元:企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット 参考データより




